ワンちゃんの肝臓癌の約70%は肝細胞癌であります。
肝細胞癌は腫瘤型、結節型、びまんの型の3つのタイプがあります。これらのうち腫瘤型は外科手術で摘出が可能であれば治療としてはベストだと思います。
ですが、複数の肝葉を侵している結節型や、散らばっているようなびまん型は外科手術が不可能です。
それでは黙って放置するしかないのでしょうか?
近年、腸内細菌叢の研究が急速な進歩をとげ、高脂肪食の取り過ぎや肥満になると、腸内でグラム陽性菌(染色液で青っぽく染まる細菌)が増殖しグラム陽性菌の細胞壁成分であるリポタイコ酸が腸肝循環である門脈を経由し、肝臓に至り肝臓腫瘍部でPGE2(プロスタグランディンE2)と呼ばれる炎症物質が多く産生されることがわかりました。
このPGE2は、炎症を起こすと同時に、抗腫瘍免疫(癌細胞を攻撃する免疫細胞、例えば、キラーTリンパ球やNKTリンパ球というような細胞性免疫)を抑制し、肝癌細胞を大きくしてしまうようなことが起こります。
以上の事実から、肝細胞癌を大きくしない為に2つの攻撃ポイントがあることがわかりました。
その1,肥満を解消し、腸内のグラム陽性菌数を減少させる。
その2,肝細胞癌が産生するPGE2(プロスタグランディンE2)をブロックすることにより、抗腫瘍免疫を復活させ再びキラーTリンパ球やナチュラルキラーTリンパ球を活性化させ、肝細胞癌を攻撃させること。
その1については、犬の食事療法や運動することによる肥満解消、整腸剤や抗生物質、オゾン注療法などによるグラム陽性菌数を減らす方法がとれること。
その2については、2021年現在、日本国内で犬の治療に用いられている。一部の非ステロイド系抗炎症剤を使用しPGE2を減らす方法が考えられています。
犬の肝臓癌の治療について、興味のある方は院長獣医師の東條雅彦にご相談、お電話ください。不在の場合こちらより連絡させていただきます。
院長 東條 雅彦