犬の悪性組織球肉腫に対する新しいタイプの内服抗がん剤について
犬の悪性組織球肉腫は、免疫細胞の一種である樹状細胞由来の悪性新生物で、大型犬である
バーニーズマウンテンドッグ、フラットコーテッドレトリバー、ラブラドルレトリバー、ゴールデンレトリバー、ウェルシュコーギーなどに多く認められる腫瘍です。
中年齢からの発症が一般的ですが、若齢で発生することもあります。組織球肉腫は、急速に広がり転移を起こす悪性度の高い腫瘍で、貧血を起こす血球貧食性組織球肉腫と言われる特殊な型もあります。
初発部位としては、脾臓・肺・中枢神経・骨髄・皮膚・皮下などが挙げられ、転移先として肝臓・肺がもっとも多く認められ、検査方法として主に次の方法が挙げられます。
・触診を含む身体検査
・血液検査
・細胞診(腫瘍に針を刺し採取した細胞を顕微鏡で観察する検査)
・胸部レントゲン検査
・腹部超音波検査
・手術による病理組織検査
・CT、MRI検査
治療法として
1.手術
発生部位が限定的であれば、外科手術で病巣を摘出し病理診断をしたのち化学療法CCNU(ロムスチン、内服薬、海外薬)、ACNU(ニムスチン、注射薬、国内薬)など3週間隔で投与するのが一般的です・
2.放射線治療
発生部位が限定的で、外科手術を望まないのであれば何回かにわけて放射線照射をしたのち手術後と同様に、化学療法を行う方法です。
3.化学療法
組織球肉腫が全身播種し、外科手術や放射線治療の適応外である場合は、CCNU、ACNUなどのアルキル化剤と呼ばれるがん細胞のDNAのコピーができないようにする抗癌剤が第一選択となります。
しかし、ほとんどの場合数カ月で薬剤耐性ができてしまい打つ手がないのが現状です。
ところが人医療の進歩に伴い、MEK阻害薬と呼ばれる細胞の異常増殖を引き起こすMEKタンパク質の活性化を阻害することで、がん細胞の増殖を抑える内服薬、抗がん剤が出現しました。
現在内服中のバーニーズマウンテンドッグの飼い主様からの問診では、CCNUに対し薬剤耐性ができてしまったが、この新しいタイプの抗がん剤を使用したところ、胸部レントゲンで肺野がきれいになり、食欲も増し、元気も出てきたという著しい効果が見られているとの報告を受けました。
今まで打つ手がなかっただけに、獣医師としては喜ばしい限りです。
費用面などの問題はありますが、御来院、御相談、承ります。院長獣医師東條と御指名のうえ御予約ください。
院長 東條 雅彦